進学校の女子高に通う高3生のNさんは、高校1年の初めから私たちの教室に通っています。週2回、英語の個別指導を受けています。
とても頑張り屋です。その Nさんが、この前、学校で受けた河合塾の模試の成績表を持ってきました。 英語が抜群にできて、今回の模試の成績も、英語は最上位の「Sランク」でした。良い成績です。受験勉強は、油断禁物ですから、減速しないよう、さらにがんばってほしいと思います。
私立文系の場合は、英語・国語・社会の3科が 試験科目です。国立は受験科目が多いですかすら、一科目くらいは不得意科目があってもなんとかなりますが、しかし、私立は、3科目だけですから、難関大の場合は、3科目とも得意科目でなければなりません。
Nさんは、英語が「Sランク」、国語も「Aランク」でしたが、それに比べて「世界史」があまり得点できませんでした。ただし、Nさんは、現役生≠ナ、学校でもまだ教科書の全ページを終えていないので、これからの努力しだいで、英語、国語と同レベルまで引き上げることは十分可能です。
私立文系の場合、社会は、だいたい「世界史」か「日本史」のどちらかが入試科目です。「世界史」は、とにかく暗記が欠かせません。暗記していなければ、得点できません。また、うろ覚えでもダメです。
入試問題というのは、イジワルで、うろ覚えのところをついてくるものです。世界史の教科書を見ると、ヨーロッパや、中国、イランやトルコ、インド、世界の3,000年の歴史がぎっしりと書き込まれています。
教科書は古代オリエントから、現代まで、正味で350ページくらいですが、覚えなければならない人名、地名、年代など、たぶん、5000項目以上あるのではないかと思います。大学入試で必要な英単語の数と、たぶん同じくらい です。
要するに、「覚えれ」ばいいだけのことですが、これが受験生にとって大 変です。テミストクレ スとか、クレイステネスとか、チャールズ一世とチャールズ二世、ジェームズ一世とジェームズ二世とか、なんだか区別がつかなくなります。
毎年、世界史で受験する生徒は、「なかなか覚えら れない。 」とこぼします。むりもありません。暗記事項が多すぎて、一つ覚えても、しばらくすると忘れてしまうので、覚えても覚えても、覚え切れない、という感じです。
そういえば、私も受験生だった頃 (ずいぶん昔の話ですが…) はどうだったろう…、と思い出してみました。
当時、国立一期校の文系は、社会は、試験科目が二科目必須でした。私は、「世界史」と「日本史」を選択しました。「日本史」は、狭く∞深く≠ナすが、 「世界史」は、日本史と違って広く∞浅くです。
日本史は教科書だけでは知識量≠ェ足りませんが、世界史の場合は、教科書をすみからすみまで 覚えれば、合格圏に達する、というところが違います。
世界史の勉強といえば、教科書の暗記項目を一覧にしてノートにまとめるとか、たとえば、山川の問題集をやってみるとか、ですが、私は、要するに、教科書を、すみからすみまで、暗記すればいいんだ、と思って、ひたすら教科書を何度も繰り返して読みながら、かたっぱしから、「これは暗記」、「これも暗記」と、オウムのように繰り返した、と記憶しています。
ローマの5賢帝とか、インドのデリー・スルタン朝の5王朝とか、お経みたいにぶつぶつ繰り返して唱えて覚えました。問題集を使わなくても 、そんな芸≠フない単純な勉強法でも、世界史はけっこう良い成績がとれました。
ところで、今、私の塾でも、予備校の「映像授業」が視聴できるので、Nさんも世界史の映像授業を受講しています。
世界史では予備校界では引っ張りだこの、有名講師の村山秀太郎先生の映像授業です。人気の村山先生、世界を廻り旅した国が百余国だけあって、本当にわかりやすく世界史の講義をしてくれますので、私も、この先生の授業は、良いと思っています。ふつうの高校の先生では、こんな“上手”な授業はできないでしょう。
ただ、予備校の授業で注意しなけれ ばならないのは、たしかにわかりや すい≠フで、 わかったつもり になってしまう生徒がけっこう多い、ということです。これが予備校の授業の落とし穴です。
もちろん、わかっただけでは、入試は得点できません。
予備校の授業は、結局、教科書や問題集のわかりやすいバージョンで、それを身に着け、覚えるための、自転車でいえば 補助輪くらいに思ったほうがいいと思います。いわば、受験勉強のスパイス≠ンたいなもので、最終的には、やはりあとで何度も何度も復習して、自分のものにしなければなりません。
結局は、暗記、ということになります。
これが苦行≠ネのですが、何か いい方法はないでしょうか。
人それぞれ 、自分流のやり方でやればいいのです。どんな方法でもいいのです。
私は、昔、こんなやり方をしました。テープレコーダーを使ってみました。教科書を朗読して、それをテープに吹き込みました。
一ページ朗読するのに、だいたい2分〜から3分くらいです。たとえば、古代ローマ史なら、教科書は10ページくらいなので、30分くらい で録音できます。これで、古代ローマ史、ぜんぶテープにつまったことになります。そんなふうに、教科書を全ページ録音すると、教科書全部の録音に12時間くらいです 。
一時間のカセットテープで、たった12本です。一週間もやれば、この12本の、自作の「教科書朗読カセット全集」が完成です。これは、一度完成すると、とても重宝で、寝る前の30分とか、朝起きた30分とか、毎日音楽を聞き流すように、聞いていると、自然に$l名や、地名や、年代などが覚えられます。
語学の勉強と同じです。何回も、聞いていると、頭に自然に入ってきて、記憶に残るのです。英語とか、数学の勉強で、頭が疲れたときの息抜きの℃條ヤに、このカセットテ ープで 、自分で録音した「世界史」の教科書のナレーションを聞きました。
それに、これは、楽です。頭も使いません。ただ聞いているだけで、教科書の総復習になるのです。それに、自分でつくった、この世界史の「カセット全集」は、なんといっても、親しみがもてます。なにしろ、自分で苦労してつくったものですから。
ただし、こんな勉強法は、だれか他の人がやったことがあるという話は聞いたことがありません。たぶん、私のオリジナル≠カゃないかと思います。そんな勉強法じゃダメだよ、という先生もいるかもしれまん。
もちろん、これだけでい い、という意味ではありません。要は、記憶の補助になるものがあればいい、ということです。私は、けっこう効果がありました。
この方法、記述式の対策にも効果があります。何度も聞いていると、断片的な人名や、地名、年代だけでなく、文章≠ワでそっくりそのまま頭に残るので、たとえばギリシャの民主制と、ローマの民主制の違いなど、すらすら言えるようになります。世界史、なかなか覚えられない、という人は、ためしに、やってみたらどうでしょう。
本来、“歴史”の勉強というのは、たくさん暗記する 、と いうことではないはずなのですが、でも、入試問題は、うろ覚えでは得点にならないので、しかたありません。合格して、入試が終わるまでは辛抱です。
どうか、がんばってください。
〇経験を活かして、ひとりひとり、丁寧に、勉強のしかたを教えます。